映画「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」を観てきました。

名演小劇場は、西洋の芸術系映画が多く上映されていて、たまに行きます。

今回は謎の美術作品に迫るドキュメンタリーでした。

観たことあるような絵、という程度の認識でよく知らない画家、ヒエロニムス・ボス

先月同じく名演小劇場にYARN 人生を彩る糸を観に行った時に、気になったのです。

と言っても、

ヒエロニムス・ボスの前売特典のクリアファイルを目当てに前売り券を買いに来ていた方がいたのですが、もう数量限定の前売特典がなくなっており、

「そんなに人気なんですか!!」

「はい、結構早く売れてしまうんですよねぇ」

みたいな店員さんとの会話が聞こえてきました。

えーっ!

こんなマイナーな、と言ったら失礼ですが、わけのわからない絵に関する映画が人気だなんて…。

というわけで観たくなったのでした。

前売特典クリアファイル15枚とかかもしれないけどね。

「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」

英題 : Bosch, The Garden of Dreams

没後500年、生年月日不明、現存する作品は25点のみ。

美術史上もっとも異彩を放つ奇想ワールドを描いたヒエロニムス・ボス。

“悪魔のクリエイター”とも呼ばれる謎多き画家の素顔とは──?

感想から言えば、非常におもしろかったです。

この生きている世のこと、わかったような気になってはいかんですね。

わからないことを楽しむ面白さです。

みんなで考えよう

スペインのプラド美術館が所蔵する三連祭壇画『快楽の園』を様々な識者の視点からとらえた映像。

美術の研究者、美術家、絵画修復家はもとより、作家、歌手、指揮者、楽器奏者、歴史家、神経科学者などなど、20人くらいの人が解明しようと「快楽の園」に向かいます。

しかし、謎に満ちた人物が描いた、難解かつ魅惑の作品。

決定的な答えはありません。

観音開きに開く、三連祭壇画『快楽の園』

はキリストの顔に似せたアダムイブ

中央は天国。とはいえ、なんでもありの世界です。

は地獄。グロテスクな地獄。

動物や果実、人間が描かれていますが、実際のものとはありえないサイズ。

スキャンダラスな表現。

そもそも情報量多すぎ。

最初は圧倒され言葉が見つからない人も、そのうちボスの世界に没入していきます。

知識人たちの力を借りて、私にもだんだん理解が進んできました。

この奇想天外な絵画も、500年前のものですから、ヒエロニムス・ボスが勝手に描いたわけではなく、貴族の依頼者がいます。

そしてめちゃくちゃに見えますが、キリスト教の教えに反したことは描かれていません。

自然の描写は非常に精緻で、さまざまな深い知識を持っていないと描けない、画家だけにはおさまりきらない博識なヒエロニムス・ボス。

実際に「快楽の園」や他の作品も鑑賞したくなります。

今までは、ヒエロニムス・ボスに影響を受けたというダリやマグリットなど、わけのわからない絵画作品を観るのがなんとなく私は苦痛だったのです。

その理由がわかりました。

わけのわからない絵を観ると、何を意味するのかという思考活動が始まり、考えを促されるのが、めんどくさかったのですね。

やはり、キリスト教の知識や西洋美術の流れがわかっていないと、絵画の意図することが理解できないんですよね。

でも、この映画は20人もの知識人から、さまざまな知識やインスピレーションを得ながら、想像を固めていくので楽しくなりました。

しかもこんなにたくさんの人と考えても、本当のことはわからない。

答えのないことを考えるのは、楽しい。